【獣医師監修】シニア猫の健康管理と飼育秘訣とは?

ネコのケア

猫の平均寿命は年々長くなり、わたしの勤務先の動物病院でも15歳以上の猫が多く来院されるようになりました。
この記事では、病気になりやすくなるシニア期(7歳以上)の猫の健康管理等について解説します。

猫の平均寿命はどれくらい?最高寿命は?

アニコム家庭動物白書2022のデータによると、猫の種類によって平均寿命に違いがあることが報告されています。
では、一般的な猫の平均寿命はどれくらいでしょうか?ギネス記録と併せてお伝えします。

猫の平均寿命は何歳?

(一社)ペットフード協会が毎年実施している最新の全国犬猫実態調査によると、猫の平均寿命は15.62歳です。同調査の2012年のデータでは猫の平均寿命は14.45歳で、この10年で1年以上平均寿命が長くなっていることがわかります。
また、外に出る猫と室内のみで飼育している猫では平均寿命に明らかな差があり、室内のみで飼育されている猫の平均寿命は16歳を超えていました。

猫の最高寿命は?

ギネス世界記録に登録されている最長寿の猫は、38才と3日生きたCreme
Puff(クリーム・パフ)という名前のメス猫
で、人間の年齢に換算すると約170歳です。約170年前の日本はまだ江戸時代で鎖国政策が敷かれ、1853年の黒船来航の前後の時期だと考えると、この記録は驚くべき数字ですね。
さらに、ギネス記録「存命中最高齢の猫」は2022年8月末に認定されたイギリスに住むFlossie(フロッシー)というメス猫で、認定された時点の記録で26歳と316日です。
また、ギネス記録には認定されていないものの、現在も存命中で2023年6月に32歳になったロージーという猫がイギリスに住んでいるというニュースもあります。人間の年齢に換算すると、120歳と144歳とどちらの猫もかなりのご長寿です。

猫の年齢は人間でいうと何歳くらい?

猫と人間の年齢換算方法は諸説ありますが、一般的に多く用いられているのは以下の換算表です。概算の計算方法は、3年目から1年に4歳ずつ歳をとると考えて計算します。

猫の年齢 人間の年齢 猫の年齢 人間の年齢
1ヶ月 1歳 11年 60歳
2ヶ月 3歳 12年 64歳
3ヶ月 5歳 13年 68歳
6ヶ月 9歳 14年 72歳
1年 17歳 15年 76歳
1年半 20歳 16年 80歳
2年 23歳 17年 84歳
3年 28歳 18年 88歳
4年 32歳 19年 92歳
5年 36歳 20年 96歳
6年 40歳 21年 100歳
7年 44歳 22年 104歳
8年 48歳 23年 108歳
9年 52歳 24年 112歳
10年 56歳 25年 116歳

参考資料:獣医師広報版 犬・猫と人間の年齢換算表
https://www.vets.ne.jp/age/pc/
(注)21年以上は上記の計算方法で計算して記入

シニア(高齢)猫のかかりやすい病気や怪我は?

猫のシニア期のはじまりは7歳くらいからと言われ、加齢に伴う変化が見えはじめる時期でもあります。

シニア期(高齢)猫に多い病気

<慢性腎臓病>

シニア期の猫が最もかかりやすい病気の一つです。
症状は多飲多尿、食欲不振、毛並みが悪くなる、痩せてくるなどで、この様に目に見える症状が表れた時には腎臓の機能の7割近くがダメージを受けている状況です。
ダメージを受けて壊れてしまった腎臓の細胞は元通りに再生させることはできません。
治療は、内服薬の投薬や食餌療法、輸液療法などで、残った腎臓の機能をなるべく良い状態に維持することを目的として行います。

<甲状腺機能亢進症>

シニア期の猫に多い内分泌疾患です。原因は、甲状腺過形成、甲状腺濾胞腺腫、甲状腺癌などで甲状腺の機能が亢進しすぎることで、異常に食欲が旺盛になり、徐々に体重が減少していきます。
高齢の猫で鳴き声が大きくなる、昼夜に関わらず良く鳴くなどの症状が見られたらこの病気を疑います。
診断は、触診や血液検査を行い、甲状腺ホルモンの値を確認します。
治療は、食事療法や甲状腺の働きを止める内服薬の投薬を行う内科療法か、甲状腺の摘出手術を行う外科療法を行います。

シニア(高齢)猫に多い怪我は?

<変形性関節症>

外傷や加齢に伴い、関節内骨折、靭帯損傷、関節炎が原因で二次的に起こるケースが多い疾患です。
猫では、肘関節と肩関節での発症が多く、前肢の跛行が見られます。
また、関節に様々な変形が見られるため症状が進行すると関節痛や関節可動域の制限、歩行異常などが生じます。
診断は、触診や視診、レントゲン検査を行い、症状によっては関節液の検査等を行う場合もあります。
変形性関節症の根本的な治療法は無いため、サプリメントや消炎剤などを投薬して関節痛の緩和や運動機能の改善を目的として対症療法を行います。

特に気をつけたい病気・怪我について

上記の疾患の他にシニア期の猫に多くなるのは内分泌疾患と腫瘍です。

内分泌疾患

体内の様々な作用をコントロールする働きをするホルモンが、過剰または不足して起こる疾患を内分泌疾患と言います。
内分泌疾患の中でも、猫に多いのは前述した甲状腺機能亢進症と糖尿病です。糖尿病とは、血糖値を下げるホルモン「インスリン」の分泌や働きに問題が起こることで、血液中の糖の値(血糖値)が高い状態が持続する病気です。
高血糖が続くと栄養を体内に取り込めないばかりか、血管が傷つきやすくなることで様々な合併症が起こります。
特に猫の場合は糖尿病と膵炎を併発しやすく、全身状態が悪化するケースもあります。

●症状
・疲れやすくなり、元気がない
・多飲多尿
・食欲旺盛なのに痩せてくる

●治療方法
血液検査と尿検査を行い、血糖値と尿糖の存在の有無により糖尿病かどうかを確定診断することが大切です。
治療は、インスリン注射を実施し、どの程度の量を投与すれば血糖値が落ち着くかを調べます。
インスリンの量が決まったら、飼い主様ご自身が毎日インスリン注射をして治療をすすめます。

●治療費の一例
糖尿病と診断された場合の治療費の一例を以下の表にまとめました。

治療内容 治療費(参考)
血液検査 1項目1,000円前後×回数
ホルモン測定(フルクトサミン等) 10,000円~
尿検査 2,000円~
インスリン注射 1本500円~
入院費用 一日5,000円前後

なお、動物病院での治療費は法律の規定により、一律ではありません。そのため同じ治療をしても病院によって治療費は異なるため治療費は参考として下さい。

腫瘍

皮膚や内臓をはじめ、骨や血液など体中いたるところに腫瘍はできる可能性があります。
猫に多いのは皮膚にできる腫瘍と白血病ウイルスが原因の腫瘍が多く、また約8割が悪性腫瘍という特徴があります。
腫瘍には悪性と良性があり、悪性の場合は転移や再発する可能性があるため、外科手術、抗がん剤治療などそれぞれの腫瘍にあった治療を選択します。

●治療方法
皮膚の表面にできた場合は、「デキモノ」がなんであるかを確定診断する必要があります。
バイオプシー(生検)を行い、組織や細胞を取って病理診断します。
外科手術ができる場合は外科手術を行いますが、猫の場合は血液のガンなど外科手術ができない腫瘍が多く、抗がん剤を使った治療が行われるケースも多くあります。

●治療費の一例

治療内容 治療費(参考)
バイオプシー(生検) 1項目1,000円前後×回数
病理検査 20,000円前後
抗がん剤 1回20,000円~
CT検査 30,000円前後
外科手術 50,000円~

シニア(高齢)猫の健康と栄養管理険

猫は、完全な肉食動物です。
そのため、猫の食事には良質なタンパク質が欠かせません。

また、小動物を追いかけてハンティングする代わりに、好奇心や遊び心を満たす遊びも猫にとっては大切です。

シニア猫に必要な栄養バランスとは?

猫は、タンパク質の消化率が老化と共に低下すると言われています。
そのため、低たんぱく食が推奨される慢性腎臓病などの猫を除いて、タンパク質の制限は推奨されていません。
また、肉食動物とはいえ、ある程度の食物繊維は健康な胃腸機能を維持するために必要です。
さらに、ナイアシン、ビタミンA、ビタミンDなど猫に不足しがちなビタミンもあります。
また、猫は脱水に対して鈍感なうえに、加齢により「喉が渇いた」という感覚がさらに鈍感になって飲水量が低下する傾向があると言われています。
上記をふまえてシニア猫におすすめの食事は、良質なタンパク質等がしっかり摂れる総合栄養食のドライフードと水分補給ができるウエットフード、そして新鮮な水という組み合わせです。
なお、生の魚介類にはビタミンB₁を破壊する酵素が含まれているため、おやつや食事として与える際にはあまり多く与えない様にしましょう。

普段の過ごし方についてどんなことに気をつけたらいい?

<猫が安心して過ごせる場所を作る>

シニア猫に限らず、猫は一日のうちのほとんどを寝て過ごします。
シニアになると寝ている時間がさらに増える傾向があるため、猫が安心して快適に過ごせる場所を作ってあげましょう。

<適切なエクササイズと遊び方>

人間と同様に、猫も加齢に伴い筋肉量が低下します。筋肉量の低下は免疫力の低下に繋がります。
若い頃の様な走り回る遊びが出来なくても、愛猫が興味を持つようなおもちゃを使って遊びに誘ってあげましょう。
また、寝床と食事を与える場所を少し離しておく等無理なく運動ができるような工夫も大切です。

<太らせない>

ペットの犬猫の半分以上が肥満・過体重であるというデータがあります。
肥満は、糖尿病や下部尿路疾患などの厄介な病気のリスクを高めます。
食事を量って与え置きエサはしない、猫の「おねだり」に頻繁に応じない様にするなど食事を管理しましょう。

<定期検診を受ける>

前述のとおり、猫は人間の約4倍のスピードで歳を取ります。最低でも1年に1回は血液検査や尿検査等の健康診断を受けましょう。

愛猫の異常に早く気が付くポイントは?

病気を完全に予防することは難しくても、愛猫の異常にすぐに気づいて対処することは、非常に大切です。
愛猫の健康状態をチェックするポイントは以下の7つです。

  • 食欲の有無の確認
  • 排尿や排便の状態(特に排尿は毎日しているかチェックする)
  • 飲水量のチェック
  • 体重測定する
  • 歩様・動き方を見る
  • 口腔内を見る(粘膜の色や歯の状態)
  • 身体に触れること

愛猫の不調に早く気づくためにも、毎日この7つのポイントをチェックすることをおすすめします。

シニア(高齢)猫こそ必要なペット保険

人間と同様、猫も加齢に伴って慢性疾患や腫瘍などが増えてくることは周知の事実です。長期に治療が必要なケースや治療にお金がかかることも徐々に増えていくことが予想されます。
その際に、飼い主様の心配を安心に変えてくれるサービスがペット保険です。

ペット保険とは

ペットには、人間の様な公的な健康保険制度はありません。そのため、動物病院での治療費の負担は全額自己負担です。
状況によっては手術や長期間の通院、治療が必要になる場合や、それに伴いペットの医療費も高額になる可能性があります。
何かあった時のための備えとしてペットのためにご自身で備えるという方法もありますが、突然のケガや病気など予想もしなかった事態に備えておくための選択肢の一つとして、ペット保険があります。
ペット保険とは、保険料をペット保険会社に支払うことで、飼い主が動物病院に支払う医療費の一部をペット保険会社が補償してくれるサービスです。
現在多くのペット保険会社がありますが、保険会社や契約プランにより、保険料や補償の内容等は異なります。

シニア(高齢)猫のペット保険加入はおすすめ?

ペット保険は、ペットの年齢が高ければ高いほど保険料が高くなるのが一般的で、ある程度の年齢になると加入できないプランもあります。
しかし、最近はシニア専用の保険や、若いうちから継続していれば年齢の制限がなく継続できるペット保険も増えてきました。
前述のとおり、ちょうどシニア期が始まる7歳くらいから病気が増えはじめる傾向があります。
ペット保険に加入していることでペットの医療費の負担が軽くなり、通院のハードルが下がるというメリットもあります。
愛猫の健康寿命を延ばすためには、病気の早期発見と治療が大切です。歳を重ねた愛猫の生活の質を保つためにも、ペット保険を賢く使うことをおすすめします。

大熊 真穂

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現在複数の動物病院で臨床獣医師として勤務しながら専門知識や経験を活かして各種メディアや個人サイトでライターとして情報を発信している。 ▼ドリトルけいのいぬね...

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