【獣医師監修】犬の皮膚病って?予防と治療法について解説

イヌのケア

犬の皮膚病は、犬種問わず非常に多い疾患です。
また、皮膚病の原因は多岐にわたり、すぐに良くなるケースだけではなく長期に渡って治療を行う場合や完治しないことも多いやっかいな病気です。

この記事では、犬の皮膚病についてまとめました。

犬の皮膚病とは

犬の皮膚病の原因は様々です。
さらに、一つの原因だけでなくいくつもの原因が関与していることも多く完治が難しい場合があります。

皮膚病の原因

犬の皮膚病の主な症状は、痒みや赤み、脱毛、ブツブツしたものが出来る、フケが出るなどですが、その原因は感染症皮膚疾患、アレルギー疾患、内分泌疾患、免疫介在性疾患、腫瘍など多岐にわたり、複数の原因が関与している場合が多いのも特徴の一つです。

特にアレルギー性の皮膚疾患は遺伝的な要因が関与するため、特定の犬種によくみられるという傾向があります。

犬によく見られる皮膚病ランキング

犬によくみられる皮膚病は以下の通りです。

<1位>膿皮症
<2位>アトピー性皮膚炎
<3位>脂漏性皮膚炎

膿皮症は皮膚の常在菌による感染が主な原因で、アトピー性皮膚炎や脂漏性皮膚炎は、遺伝的な要因や体質的な問題があるため症状が少し良くなることがあっても完治しないことが多く、ランキング上位を占めるのも納得の結果です。

発症の仕組みと原因

<膿皮症>

膿皮症は感染性皮膚炎のひとつです。
感染性皮膚炎には細菌、真菌、寄生虫などの感染によっておこるものと、皮膚にもともといる常在菌が原因でおこるものがあります。

膿皮症は、皮膚の常在菌であるブドウ球菌が、免疫力の低下や気温・湿度などの環境要因、内分泌疾患などが原因で増えすぎて悪さをすることで発症します。

<アトピー性皮膚炎>

アトピー性皮膚炎とは、アレルギー性皮膚炎のひとつです。

アレルギーは、体内に侵入するウイルスや花粉、カビなどの外から体内に侵入する異物から身体を守る免疫システムが過剰に反応してしまうことで起こります。
直接的な原因は未だ不明ですが、その様な過剰な免疫反応をはじめ、遺伝的な要因や皮膚表面のバリア機能の異常がアトピー性皮膚炎の原因だと考えられています。

なお、アトピー性皮膚炎になりやすい犬種は、柴犬、フレンチブルドッグ、ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア、ゴールデンレトリバー、ラブラドールレトリバー、パグなどです。

<脂漏性皮膚炎>

遺伝的な要因や環境要因、内分泌疾患、脂質の多い食事などが原因で、皮脂の量が増えることや皮脂の成分のバランスが悪くなることで発症する皮膚炎です。
このように皮膚のコンディションが悪化した上に、皮膚に常在する酵母菌の一種であるマラセチアが増殖するとマラセチア皮膚炎を併発し、フケやべたつきだけでなくかゆみや赤みを生じます。

脂漏性皮膚炎は生涯にわたって管理が必要で、脂漏性皮膚炎になりやすい代表的な犬種はシーズー、ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリアが挙げられます。

犬の皮膚病の予防策やケアの方法

前述のとおり犬の皮膚病の原因は様々で、完全に皮膚病を予防するのは不可能ですが、体調や皮膚・被毛のコンディションを整えるケアをすればある程度の予防効果が期待できます。

日常生活の皮膚ケア

ブラッシングは、無駄な抜け毛を取り除く、被毛をきれいにするということ以外に皮膚の血液の循環を良くする効果があり、皮膚のバリア機能を高めます。

また、皮膚や被毛のコンディションを良好に保つには、汚れや余分な皮脂をシャンプーで洗い流し、更に皮膚の表面の角質層のケアのための保湿を行うことが大切です。

おすすめの洗い方は、犬が浸かるくらいの大きさのたらいやベビーバスなどにシャンプーを入れて泡立てて、その中に犬を入れて泡で洗浄する方法です。
犬の皮膚は、皮膚の構造やPHが人間と同じではなく非常にデリケートで、人間用ではなく犬用の低刺激性のシャンプーを使う必要があります。

シャンプーの頻度は、市販のシャンプー剤は洗浄力が強いものが多いので月に1回くらいが目安です。
もう少し頻回に洗いたい場合や皮膚のトラブルがある場合は、動物病院で処方されたシャンプーの使用がおすすめです。

食事による皮膚ケア

栄養状態が充実していると、皮膚の状態は改善します。
ライフステージや皮膚のトラブルに合わせて食事の内容を変えていくことも、皮膚ケアの一助となります。

また、脂肪分や添加物の多い食事やおやつは皮膚のべたつきや涙やけの原因になるため、できるだけ与えないようにしましょう。

犬の皮膚病の治療方法、主な症状と費用

次に犬の皮膚病の主な症状と費用についてまとめました。
なお、同じ治療をしても動物病院によって金額の設定が異なるため治療費の一例として表記してあります。

  主な症状 治療費の一例
膿皮症 痒み
発疹
丘疹(赤いブツブツ)
ニキビ様の腫れ
抗生剤・消炎剤投薬(7日分)
内服薬1,500円~3,000円
外用薬 2,000円前後
薬用シャンプー2,000円~
ノミの寄生
ノミアレルギー性皮膚炎
強い痒み(突然身体を掻くなど)
赤み
発疹
*特に腰からおしりにかけて症状がでやすい
皮膚検査 1,000円~2,000円
ステロイド注射1回2,000円~
抗生剤・消炎剤投薬(7日分)
内服薬1,500円~3,000円
外用薬 2,000円前後
ノミ駆虫薬 2,000円前後
アトピー性皮膚炎 赤み
毛が薄くなる
かゆみが続く(強弱あり)
悪化すると広範囲に脱毛や腫れ、皮膚が硬く厚くなる
*上記の症状が左右対称に表れる
皮膚検査 1,000円~2,000円
皮下注射2,000円~10,000円
抗生剤・消炎剤投薬(7日分)
内服薬1,500円~3,000円
アトピー用の内服薬 一日300円~
外用薬 2,000円前後
薬用シャンプー2,000円
脂漏性皮膚炎 皮膚のべたつき
フケ
痒み
外耳炎
皮膚検査 1,000円~2,000円
抗生剤・消炎剤投薬(7日分)
内服薬1,500円~3,000円
外用薬 2,000円前後
薬用シャンプー 2,000円
治療目的の薬浴など5,000円~
その他(腫瘍・内分泌疾患が原因の皮膚疾患) 治療をしても全く改善しない
食欲不振など健康状態が悪い
できものができて大きくなる
広範囲の皮膚炎
脱毛、
腹部がふくれる
多飲・多尿など
*原因によって異なります
血液検査10.000円~
レントゲン検査1枚5,000円~
エコー検査 5,000円~
ホルモン測定 10,000円前後
病理検査(皮膚生検)20,000円前後
抗がん剤(内容によりますが最低でも1回10,000円~

皮膚病治療のアドバイス

皮膚病の診断は、問診が非常に大切です。
犬の年齢や犬種、飼育環境を始め、不妊手術の有無、ノミやダニの定期的な予防をしているか、食事内容、季節によって症状が出やすい時期はあるか、健康状態に問題はないかなど、問診で得られる情報が皮膚病治療には非常に参考になります。

飼い主さまが口頭で説明するのが大変なこともあるので、診察を受ける前に上記の情報をメモしていくことや普段使っているシャンプー剤やドッグフードのパッケージの写真を撮っていくと愛犬の現在の状況をしっかり伝えることができるためおすすめです。

皮膚病の治療が気になった時は

皮膚病の原因により治療方法が異なるのはお伝えしたとおりで、皮膚病は完治しない場合があります。
しかし、定期的にしっかり治療しているにも関わらず症状が全く改善しない場合には皮膚専門の動物病院や大学病院の皮膚科などでセカンドオピニオンを受けてみるのもおすすめです。

皮膚病は長期に渡って治療を継続するケースも多いため、「ずっと治らないような気がするけど、大丈夫かな」という不安を抱えたままよりも専門の獣医師のアドバイスを受けることで、違った観点から治療を受けられる、現在ホームドクターで行っている治療が安心して続けられるなど、多くのメリットがあります。
少しでも気になったらかかりつけの獣医師に相談してみましょう。

こんなケアには要注意・実際にあった事例

ここでは、注意喚起の目的で、わたしが臨床経験で実際にあった事例をご紹介します。

<ケース1>

膿皮症の小型犬が、「皮膚が数か所ただれてしまった」という症状で飼い主さまと一緒に来院されました。皮膚病の愛犬の皮膚によいという判断で、強い硫黄成分の入った人間用の入浴剤で薬浴を行ったとのことでした。

幸いにも皮膚は改善し、今後は定期的に動物病院で治療と予防を兼ねてシャンプーなどの皮膚ケアを行うことになりました。

犬の皮膚は非常に薄いため、人間用のシャンプーや入浴剤は絶対に使わないようにしましょう。

<ケース2>

「お家でこまめにシャンプーをしているにも関わらず、皮膚炎症状が改善しない」という症状でウエルシュコーギーが飼い主さまと一緒に来院されました。
ケアの方法について伺うと、「シャンプーはできるもののドライヤーを非常に嫌がるため、タオルドライのままで自然乾燥しています」とのことでした。

シャンプー後は、被毛の根元までしっかりドライヤーで乾かす必要があります。

特に、ウエルシュコーギーや柴犬などダブルコート(上毛と下毛がある被毛の種類)の犬種は、ドライヤーでしっかり乾かさないと被毛が密なので蒸れてしまい、かえって皮膚病が悪化するケースがあります。

ドライヤーの時間を短縮するためのコツは、シャンプー前にしっかりブラッシングをすることと、汚れやシャンプー剤をしっかり洗い流すことです。お家でのケアが難しい場合は、動物病院やトリミングサロンに依頼しましょう。

ペット保険の選び方

ペットには、人間の様な公的な健康保険制度はありません。そのため、動物病院での治療費の負担は全額自己負担です。

状況によっては手術や長期間の通院、治療が必要になる場合や、それに伴いペットの医療費も高額になる可能性があります。
何かあった時のための備えとしてペットのためにご自身で備えるという方法もありますが、突然のケガや病気など予想もしなかった事態に備えておくための選択肢の一つとして、ペット保険があります。

ペット保険とは、保険料をペット保険会社に支払うことで、飼い主が動物病院に支払う医療費の一部をペット保険会社が補償してくれるサービスです。
皮膚病は障害に渡って管理が必要なケースも多いため、アレルギーや脂漏性皮膚炎になりやすい犬種はペット保険に入っておくことをおすすめします。

現在多くのペット保険会社がありますが、保険会社や契約プランにより、保険料や補償の内容等は異なります。自分とペットにあった保険を選ぶには、情報を集めて比較検討をすることが大切です。
どんな補償内容が必要かは人によって異なりますが、ここではペット保険の選び方のポイントについてお伝えします。

ペット保険選びのポイント

ペット保険を選ぶポイントは以下の3つです。

  • 保険料
  • 補償内容の違い
  • 加入時の年齢

<保険料>

一般的に補償内容が多ければ多いほど、さらにペットの年齢に比例して保険料は高くなり、実際に支払う保険料は月額500円~1万円くらいまでとかなり差があります。
どの補償内容が必要なのか検討し、保険料とのバランスを考えて決めましょう。

<補償内容>

補償内容は、手術のみ補償するプラン、通院も含め手術や入院も補償するプランなどいろいろなプランがあり、補償割合も30%~90%などがあります。

保険料とのバランスもありますが、「万が一の事態に備え高額になりがちなペットの治療費の負担を軽くし、さらに通院のハードルが下がる」という意味では通院と手術・入院を補償するプランがおすすめです。

<加入時の年齢>

ペット保険はペットの年齢が高ければ高いほど保険料が高くなるのが一般的で、ある程度の年齢になると加入できないプランもあります。
反対に、シニア専用の保険やシニアになっても継続できるペット保険もあります。

また、動物病院での支払い時に補償額を差し引いて窓口精算できる(対応可能動物病院のみ)ペット保険やLINE等で簡単に保険請求の申請ができるペット保険など、手続きの煩雑さが少ないペット保険もあります。

さらに、医療やしつけについて獣医師に24時間無料電話相談ができるサービスが付帯しているペット保険もあり、特に初めて犬を飼う方にはこの様な相談ができる付帯サービスがあるペット保険がおすすめです。

なお、ペット保険は病気やケガのために備える目的のものなので、フィラリアの予防、ワクチンや不妊・去勢手術、ノミ・マダニなどの予防に関するものや保険加入前に発症している病気や先天性疾患に関しては補償の対象外なので注意しましょう。
ペット保険の補償には限度額や限度日数・回数など制限があるので、保険料や補償内容・年齢などの加入条件と併せて確認しておくと安心です。

大熊 真穂

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現在複数の動物病院で臨床獣医師として勤務しながら専門知識や経験を活かして各種メディアや個人サイトでライターとして情報を発信している。 ▼ドリトルけいのいぬね...

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