【獣医師監修】初めての猫の飼い方ガイド「準備は何をすればいいの?」

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猫をお迎えすることが決まったら、どんな準備をすればよいのでしょうか?
(一社)ペットフード協会が毎年実施している調査によると、新型コロナウイルス感染症の感染拡大後に新しく猫を飼い始めた方に「毎日の生活が楽しくなった」というポジティブな影響が表れているという報告がありました。
飼い主と同様に愛猫が毎日楽しく快適に生活できるように、猫の基本的な飼い方、体調管理や健康面で気をつける事、かかりやすい病気、さらにケガや病気に備えるためのペット保険についてご紹介します。

初めて猫を飼う方にむけての飼い方ガイド

最初に猫を飼う際の心構えについてお伝えし、その後基本的な飼い方、健康や病気の話を解説します。

猫を飼う際の心構え

猫を飼う際の心構えで一番大切なのは、「最後まで責任を持って飼育する」ことです。
人間の生活事情も変化する可能性があり、猫も病気になる可能性があります。
その様な状況の変化があっても、「責任をもって終世飼う」という覚悟が無ければペットは飼うべきではありません。
また、猫は室内飼いをおすすめします。
本来、自由なハンターである猫にとっては、室内での生活は自然に反した状態と言えるかもしれません。
しかし、昨今の交通事情や住宅事情を考えると、猫の習性をよく理解し、室内でも快適に過ごせる様に工夫をした上で室内飼育する方が猫にとっては安全です。
「最後まで責任を持って飼育する」「猫の習性をよく理解した上で室内飼育する」この二つを心構えとして、ご自身の生活スタイルや住環境が、猫が安心して生活できる環境であるかをよく考えて決めましょう。

猫をお迎えするにあたり、最低限必要なもの

●トイレ(理想は猫の数+1)

猫は、基本的にはトイレの場所を覚えるのが非常に早く、数回教えれば決まった場所(トイレ)に排泄をします。
その反面、トイレの場所を頻繁に変更する、トイレの砂の材質を変えるなどのトイレ事情が変わると、そのトイレで排泄しなくなるなど神経質な部分もあります。
そのため、トイレは複数用意し、トイレの形状や砂の材質など猫の好みを見ながら決めることが大切です。
トイレの設置場所は玄関など人の出入りが激しい場所は避けて、猫が落ち着ける場所を選びましょう。

●ケージやベッドなど落ち着ける場所を用意する

本来単独行動を好む動物である猫には、ひとりで過ごす時間も必要です。
小さなケージやベッドなど、猫が落ち着ける場所を用意しましょう。
また、お迎えして1週間くらいはケージの中にトイレを入れてその中で生活させて、環境に慣れさせる必要があります。

●食事と水用の食器

食事用と水用の食器を用意し、猫の年齢と体重に合わせたキャットフードと新鮮な水を与えましょう。

●爪とぎ器、おもちゃ

猫は爪をとぐ習性があります。
猫の爪はいくつもの層が重なっている構造で、爪をとぐことで古い爪が剥がれて抜け落ちます。
猫の爪とぎは、このような爪のお手入れ以外に、ストレス解消やマーキングの意味があるとも言われ、本能的な行動なのでやめさせることはほぼ不可能です。
大切な家具や柱などで爪とぎをさせない様に、子猫の頃から爪とぎ器で爪をとぐようにしつけをしましょう。
また、猫は好奇心旺盛で遊びが大好きで、特に高いところに登ったり下りたりの上下運動を好む傾向があります。
猫が飲み込まない大きさのおもちゃやキャットタワーなど、猫が本能に基づいて起こす行動(高いところに登る、爪をとぐ、動くものを狩るなど)を満足させるような道具や場所を用意して、猫が居心地のよい環境作りを心がけましょう。

猫の健康管理について

●食事について

キャットフードは肉食動物である猫の本来の食性とは異なっているという意見もありますが、自己流の手作り食では栄養のバランスをとるのは非常に難しいため、特に初めて猫を飼う方はライフステージに合わせた総合栄養食を与えることをおすすめします。
食事の回数は、生後4か月くらいまでは一日3回、それ以降は一日2回に分けて与えましょう。
また、ドライフードの「置きエサ」は猫の胃腸に負担がかかるため、決まった時間に与えてある程度の時間になったら片づけるという給餌方法が理想的です。

●トイレの管理

猫のトイレは毎日掃除し、きれいにするように心がけましょう。
猫はキレイ好きなのでトイレが汚れていると他の場所に排泄する可能性があります。
その反面、一度に全部新しい砂に交換するとトイレを使わなくなる可能性があるので、砂の全交換は頻繁には行わないようにして、普段は排泄物だけを捨てて新しい砂を少しずつ足すようにしましょう。
トイレの掃除は、愛猫の排便や排尿の異常に気づくきっかけとなるので、ぜひ毎日の習慣にしてください。

●猫にとって危険なもの

猫が食べると中毒を起こす可能性のあるものは、数多く存在します。
その中でも特に誤飲や誤食に注意する危険なものは、以下の3つです。
●玉ネギ:赤血球を破壊し、貧血や黄疸、肝機能障害を起こす
●チョコレート:心不全様の中毒を起こし、摂取量によっては死に至る可能性がある
●ユリ科の植物:花や葉の誤食はもちろん、ユリがいけてある花瓶の水を飲んだだけで嘔吐や腎障害などの中毒を起こして死に至るので注意が必要
特にユリ科の植物は、命に関わる症状が起きる可能性が高いので、猫を飼う場合はユリ科の植物は
置かないようにしてください。
また、猫はアロマオイルや精油の成分を代謝することができないため、肝障害や神経症状などの中毒症状が起きる可能性があります。
猫のいる部屋ではアロマオイルや精油は絶対に使用しないように注意しましょう。

猫によくある病気について

猫に多い病気は、下痢や嘔吐、誤飲などの消化器疾患、膀胱炎や腎臓病などの泌尿器疾患、皮膚疾患の3つです。

<消化器疾患>

消化器疾患とは食道や胃、腸など消化器系の病気のことで、特に多いのは下痢や嘔吐、そして異物誤飲です。
消化器疾患の原因は、治療すればすぐに治るものや腫瘍や異物など命に関わるものまで様々です。
また、布やタオルなどを食べる「ウールサッキング」という問題行動を起こす猫がいます。
「ウールサッキング」の原因は不明ですが、この行動をやめさせるのはほぼ不可能です。
また、そのような習性が無い猫でも、おもちゃなどを誤飲してしまうことがあります。
誤飲を防ぐためには、誤飲しそうなおもちゃやヒモなどを置きっぱなしにしないことが一番の対策で、誤飲が原因で腸閉塞を起こした場合は開腹手術が必要になるので要注意です。
<消化器疾患の際に行う主な治療内容と治療費の例>
*動物病院での治療費は、各々の動物病院で決めているため同じ治療を行っても費用は異なります

治療内容 治療費(参考)
診察料 500円~2,000円
便検査 1,000円~2,000円
血液検査 10,000円~
レントゲン検査 1枚5,000円~6,000円
超音波検査 6,000円前後
点滴治療(皮下点滴)
(静脈点滴)
1回1,500円~3,000円
1日5,000円前後
制吐剤や下痢止めの皮下注射 1本500円~3,500円
内服薬 1日100円~
内視鏡検査 30,000円~
開腹手術 100,000円~

<泌尿器疾患>

猫の泌尿器疾患で多いのは、膀胱炎と尿石症などの猫下部尿路疾患と加齢に伴って増える慢性腎臓病です。
その中でも比較的よく見られる病気は、マグネシウムなどのミネラル分のバランスが悪いフードを食べることや体質などが原因で起こる尿石症です。
尿石症は、膀胱から尿道に至る尿路の間に結晶・結石ができて炎症がおこるため、尿が出にくくなる、頻繁にトイレにいく、血尿がでるなどの症状が見られます。
また、尿道が完全に閉塞した場合は、急性腎不全になり、命に関わります。
結晶や結石ができないように尿のPHをコントロールする目的で療法食を処方し、抗生剤の投薬で炎症を抑える治療を行いますが、何度も尿道閉塞を繰り返すオス猫の場合は手術を行う場合があります。
慢性腎臓病は7~8歳以降になると増えてくる病気です。
現時点では猫の慢性腎臓病は完治しない病気で、点滴治療や投薬、療法食などを使って正常な腎臓の細胞を少しでも維持することを目的とする治療を行います。
治療は長期間必要になるため、累計すると高額な治療費が必要になる可能性があります。
<泌尿器疾患の際に行う主な治療内容と治療費の例>

治療内容 治療費(参考)
診察料 500円~2,000円
尿検査 1,000円~4,000円
血液検査 10,000円~
レントゲン検査 1枚5,000円~6,000円
超音波検査 6,000円前後
点滴治療(皮下点滴)
(静脈点滴)
1回1,500円~3,000円
1日5,000円前後
抗生物質などの皮下注射 1本500円~3,500円
内服薬 1日100円~
手術 200,000円~

<皮膚疾患>

ノミやダニなどの寄生虫によるものや、アレルギー性皮膚炎、咬傷などのケガなど皮膚疾患の原因は様々です。
さらに、皮膚疾患は原因がわからないケースも少なくありません。
また、顎の毛が抜けてブツブツしたものが出来たり、赤くなったりするニキビ(猫にきび・猫ざそう)もよく見られる皮膚疾患で、消毒や投薬により治療を行いますがなかなか治りにくく、再発を繰り返す場合があります。
<皮膚疾患の際に行う主な治療内容と治療費の例>

治療内容 治療費(参考)
診察料 500円~2,000円
皮膚検査 1,000円~2,000円
駆虫薬などの投薬 1回1,500円前後
消毒処置 1,000円~
内服薬 1日100円~

急な出費に備えるためのペット保険

動物には人間の様な公的な健康保険制度がないため、動物病院での治療費は全額自己負担です。
さらに、前述のように治療費が高額になるケースも考えられます。
また、若くて元気な猫でもケガや病気で治療が必要になる場合があり、これは全く予想ができません。
このような突然の出費に備える選択肢のひとつとして、ペット保険があります。
ペット保険とは、保険会社に保険料を支払う代わりに、高額になりがちな動物病院での治療費の一部を保険会社が補償するというサービスです。
補償内容や補償額は保険会社や加入プランによって異なるため、ペット保険の加入の際には情報を集めて比較検討し、ご自身と愛猫にあった保険を選ぶことが大切です。

ペット保険の選び方

現在、ペット保険を扱う保険会社は10社以上あります。
どんな補償内容が必要かは人によって異なりますが、ここではペット保険の選び方のポイントについてお伝えします。

ペット保険選びのポイント

ペット保険を選ぶポイントは以下の3つです。
●保険料
●補償内容の違い
●加入時の年齢

<保険料>

一般的に、補償内容が多ければ多いほど、そしてペットの年齢に比例して保険料は高くなります。保険料は月額500円~1万円くらいまでと幅があるので、補償内容とのバランスを考えて決めましょう。

<補償内容>

補償内容は、手術のみ補償するプラン、通院も含め手術や入院も補償するプランなどいろいろなプランがあり、補償割合も30%~90%などがあります。
猫の場合は、かかりやすい病気を考えると高額になる可能性のある手術や入院プランを網羅したうえで、通院治療も補償してくれるプランがおすすめです。

<加入時の年齢>

ペット保険は、ペットの年齢が高ければ高いほど保険料が高くなるのが一般的で、ある程度の年齢になると加入できないプランもあります。
猫の平均年齢を考えると、シニアになっても継続できるペット保険を選択することをおすすめします。
保険会社によっては動物病院での支払い時に補償額を差し引いて窓口精算できる(対応可能動物病院のみ)ペット保険や、医療やしつけについて獣医師に24時間無料電話相談ができるサービスが付帯しているペット保険もあります。
特に初めて猫を飼う方には、このような治療費の補償以外の付帯サービスがあるとより安心です。
また、ペット保険は病気やケガのために備える目的のものなので、ワクチンや不妊・去勢手術、フィラリやノミ・マダニなどの予防に関するものや保険加入前に発症している病気や先天性疾患に関しては補償の対象外です。
さらに、ペット保険の補償には限度額や限度日数・回数など制限があるので、保険料や補償内容・年齢などの加入条件と併せて確認し、ご自身に合ったプランを選びましょう。

大熊 真穂

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現在複数の動物病院で臨床獣医師として勤務しながら専門知識や経験を活かして各種メディアや個人サイトでライターとして情報を発信している。 ▼ドリトルけいのいぬね...

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